資料の日付を見る

最初に見るのは、記事の日付ではなく、記事が引いている資料の日付だ。発表された日と、起きた日は違う。企業が数か月前の事故を今日になって公表することもあるし、古い発表が新しい話として流れてくることもある。「いつ出た話か」と「いつ起きたことか」を分けて読む。

更新日も同じくらい大事だ。料金、提供地域、対象プラン、一般提供の開始日。発表のあとで変わる条件は多い。最初の記事が正しくても、更新されていなければ読者を誤らせる。何がいつ変わったかが書かれているかを見る。

誰の言葉か

同じ出来事でも、企業の発表、政府の公表、第三者の調査では意味が違う。企業は自社に都合のよい範囲を切り出すことがある。政府の公表は調査の途中であることがある。第三者の調査にも前提と限界がある。

記事が、誰の言葉を引いているのかを書いているか。発表をそのまま引いたのか、記者が確かめたのか、別の媒体の報道を又引きしたのか。主体がぼやけたまま「分かった」と書いてある記事では、一度立ち止まる。

見たことと考えたこと

記事の文は、見たことと、考えたことに分かれる。「発表した」「記録がある」は見たことだ。「狙っている」「失敗するだろう」は考えたことだ。考えたことを書くのは悪くない。困るのは、両方が同じ調子で並んでいて、読者に区別がつかないことだ。

「とみられる」「可能性がある」は、考えたことの印になる。ただ、印があれば正しいわけではない。誰がそう考えたのか、根拠は何か、反対の材料はないのか。そこまで書いてあるかを見る。

翻訳で条件が落ちる

海外の発表を日本語にすると、条件が落ちることがある。料金の通貨、対象の国、規約の版、モデルの版。原文では当たり前に書いてある前提が、翻訳では省かれる。原文へのリンクがあるか、条件を省いていないかを見る。

翻訳は情報を届ける手段としては有効だが、それだけでは検証にならない。原文に当たって数字と条件を確かめる。読者も、開けるなら原文を開いてみるとよい。

編集部の手順

ブンリンAIラボの特集は公開資料をもとに構成し、本文中か記事末に参考リンクを置く。内容に関わる訂正は記事の訂正履歴に残す。公開前に編集部が見るのは三つ。主張が参考リンクの範囲を越えていないか。見たことと考えたことが混ざっていないか。数字の対象、期間、単位が一致しているか。

この手順を踏めば、速さは削られる。だが確認を省いた速さは、あとで取り戻す費用のほうが大きい。読者に必要なのは、最初に届くことより、あとで確かめられることだと思っている。